スポンサーリンク

No reysol,No life 2023年度(令和5年)柏レイソル個別経営情報開示

2024reysol

毎年7月後半に公開されるJリーグ個別経営情報開示資料。柏レイソルは3月決算のため発表時期が7月です。

・2023年度(令和5年度)Jクラブ経営情報開示(公式
・2023年度クラブ経営情報開示資料(本発表)(公式

という訳で例年のようにP/L中心に見ていきます。

スポンサーリンク

前提

・2023年度(令和5年度)は、2023年4月から2024年3月までの動きが対象となります。

柏レイソルの2023年シーズン

 -成績が振るわず、リーグ戦では2022年後半からクラブ最長となる16試合勝ちなしが続きました。
 -その結果、2023年5月に第2期ネルシーニョ政権が終了を迎え、井原監督が内部昇格の形で指揮を執ることになりました。
 -夏に浦和から期限付き移籍で犬飼さんを獲得。守備の再構築をおこなうと徐々に引き分けが増え辛うじて残留を確保。
 -順位は18チーム中17位。2024年から20チーム拡大に伴い降格枠が1つしかなかった恩恵を受けた形。
 -一方、天皇杯では決勝進出を果たし、2024年への期待も抱かせたシーズンでした。

2023年度の移籍動向 シーズン中の移籍(IN/OUT)

 5月:ネルシーニョ監督とディオゴフィジカルコーチが退任。
 7月:升掛選手が愛媛に期限付き移籍、犬飼選手が浦和から期限付き加入。
 8月:山田雄士選手が栃木への育成型期限付き移籍から復帰、大嶽選手がV大分に期限付き移籍。

2023年-2024年 シーズンオフの移籍(IN/OUT)

 OUT:ドウグラス選手が引退。三原選手、ブエノ、大嶽選手、エメルソン・サントス、アンジェロッティが契約満了で他クラブと契約。 椎橋選手、山田康太選手、森選手、仙頭選手は移籍。落合選手、岩下選手、加藤選手、田中選手は期限付き移籍となりました。

 IN:犬飼選手が期限付きから完全移籍に。木下選手、野田選手、島村選手、白井選手が完全加入。升掛選手、鵜木選手が復帰し、関根選手が大学在学中ではありますが1年前倒しで新規加入をしました。

前年度経営情報のポイント

・柏は前年度である2022年度までで、2.58億円の債務超過となっていました。Jリーグのライセンスだと、2025年度末までに債務超過を解消する必要がありました。また、コロナ禍で一時停止していた3期連続赤字ルールが2024年度からは再開となります。
・経営的に、債務超過の解消が念頭にあったオフシーズンだったのは間違いないでしょう(移籍金が発生しそうな獲得は犬飼さんくらいに抑えてたことからも)
 

営業収入

前提を振り返りましたので、例年のように収入から見ていきます。Jリーグクラブの収入は、大きく「スポンサー」「放映権(Jリーグ分配金)」「入場料」「その他」に分類されます。Jリーグが発表している【Jリーグ クラブ経営ガイド】には、収入費目の内訳が記載されているため、どの収入はどの項目というのはイメージがつきやすいです。ただし、費用をどの費目で計上するかについては各クラブの判断に任されているそうです(レノファ会長のX投稿より)。クラブごとに税理士さんなどからのアドバイスを受けて申告されているため、厳密には横並びの比較はできないのかもしれません。

引用元:Jリーグ クラブ経営ガイド 2022

総収入

少し見づらいですが、2005年以降、収入の経年変化を表にしたものです。

年度売上高スポンサー収入入場料収入配分金アカデミー収入女子収入物販収入その他収入備考
23年度44.1931.114.132.950.22-0.115.67
22年度46.3230.294.823.780.22-0.007.21
21年度39.0629.872.373.990.220.012.60
20年度46.1328.931.433.820.170.0111.77
19年度31.4022.064.142.080.220.522.38J2
18年度41.5019.684.497.080.250.679.33
17年度34.5419.545.544.660.260.773.77
16年度28.7419.294.351.850.300.612.34
15年度30.1919.285.181.860.343.53
14年度31.6519.434.662.010.664.89
13年度34.1219.476.462.040.715.44
12年度35.5119.895.762.340.746.78日立台改修
11年度35.4318.784.962.300.748.65
10年度27.4319.982.911.173.37J2
09年度28.5917.634.742.094.13
08年度29.9718.744.602.364.27
07年度31.4319.304.112.585.44
06年度32.4425.022.841.393.19J2
05年度38.7417.825.292.5013.13

※単位は億円。レイソルの場合物販収入は委託しているため物販の売上を示していないことに留意。

レイソルの2023年度の営業収入は、44.19億円でした。過去最高額を記録した2022年度46.32億円より2.13億円の減収となりましたが、40億半ばレベルの売上はキープできました。

Jクラブ全体での立ち位置を見てみます。2023年度営業収入額を上から順に並べると、浦和(103.84億円)、川崎(79.63億円)、神戸(70.37億円)、G大阪(65.74億円)、マリノス(65.09億円)、鹿島(64.62億円)、名古屋(63.03億円)となり、7クラブで60億円を超えています。次いで、FC東京(59.29億円)、清水(51.01億円)となっています。50億円を超えたクラブの数は9クラブなので2023年度と同じですが、みな増収となっています。その後、C大阪(48.68億円)、柏(44.19億円)、磐田(42.54億円)、広島(41.98億円)、札幌(41.11億円)までが40億円以上のクラブです。柏を含め14クラブが40億円を超えています。

●営業収入規模とクラブ数の変化
50億円超えクラブ:19年度8→20年度4→21年度7→22年度9→23年度9

40億円超えクラブ:19年度9→20年度10→21年度9→22年度12→23年度14
30億円超えクラブ:19年15→20年度13→21年度15→22年度15→23年度18

全60クラブのうち18クラブが30億円の売り上げを記録していることになります。

●J1所属クラブの平均営業収入額
2019年度:49.51億円
2020年度:38.36億円
2021年度:42.37億円 ※20チーム
2022年度:47.02億円
2023年度:52.01億円

J1所属クラブの平均営業収入(売上)はついに50億円を超えました。J1所属クラブの平均売上は、10年前の2013年度が30億円程度でしたので、10年で50億円を超える規模まで拡大しています。ひとえにDAZNマネーの恩恵と言えるでしょうが、停滞している日本経済の中ではすごいことです。J2所属クラブの平均営業収入は20.48億円、J3では6.55億円となっています。ただ、J3では2023年と2022年を比べた際に7.28億円から6.55億円に減っており、やや気になるところ。

ちなみに、同じように売り上げを発表しているプロスポーツでは、バスケットのBリーグ、B1所属チームの平均が14.2億円でトップのアルバルク東京が26.9億円となっていました。

スポンサー収入

ココからはレイソルの各費目にフォーカスします。スポンサー収入は、2022年度30.29億円から31.11億円に微増での推移となりました。2022年がレイソル30周年節目の年だったので、この年だけ大盤振る舞い的にお金をいただけた訳でなく30億円規模を維持できたのは良かったのかなと。スポンサー収入で見ると浦和(42.23)、川崎(34.52)、柏(31.11)と3番目になります。

ちょっと古くなっていますが、毎年引用させてもらっている2017年の意見交換会のコメントを引用します。

(2017年当時)30億ちょっとの総売上のうち、スポンサー料(19.5億円)が大半を占めています。(総売上)30億のうち13億は日立からいただいているスポンサー料です。その他6億は日立グループが主な相手先となるスポンサーで、当然その他にも地域の中小企業さんからご支援をいただいております。

2017年柏レイソル意見交換会議事録

経年のデータを見ると、2010年度(19.98億円)から2018年度(19.68億円)まで、スポンサー収入の額は19億円前後が続いていました。つまり、総売上約30億に対して、スポンサー収入が19.5億ほどで、そのうち日立グループが13億円。これが、2019年度に22.06億円、2020年度28.93億円、2021年度29.87億円、2022年度30.29億円ととんとん拍子で増えていき、2023年度には31.11億円となっている訳です。なぜこんなに増えたのかを探ってみます。

この間の出来事を並べて整理してみたいと思います。

①三協フロンテアさまのスポンサード(2018シーズンから)
→2018年01月24日にリリース。2018シーズンからスタジアムのネーミングライツとユニフォームのスポンサー契約を締結。スポンサー収入では2018年度は金額の変動がなく、2019年度で増えている。

②ユニフォームスポンサーの拡大(2018、2020シーズン)
→これも同じく2018シーズンからユニフォームの鎖骨位置にスポンサーが許可されました。2020年6月にはパンツの背面も解禁となっています。

  • 2017→2024     
  • シャツ前面:HITACHI Inspire the Next→HITACHI Inspire the Next LUMADA
  • シャツ鎖骨右:解禁前→三協フロンテア
  • シャツ鎖骨左:解禁前→日立ソリューションズ
  • シャツ背面:Aflac→Aflac+50周年ロゴ 
  • シャツ背面裾:Zeal Holdings→日立ビルシステム
  • シャツ左袖:日立アーバンインベストメント→日立システムズ
  • パンツ前面:ローソン→ローソンチケット 
  • パンツ背面:解禁前→日立ハイテク
    ※KASHIWA Reysol × Save the Childrenはスポンサー活動ではないので除外(2018背中上部→2024左袖)

→2017年と比べると、解禁前の鎖骨×2とパンツ背面が増えています。川崎さんのスポンサー資料によると鎖骨が1.5億×2、パンツ背面が6千万円となっています。柏が川崎と同じ金額だとは思えませんが2億くらいは増えた計算になるのかなと。

③Lumadaがユニフォーム胸位置に表示されるようになったこと(2021シーズンから)

2021シーズンより日立ロゴに加え、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称である「Lumada」ロゴも掲出。

2021年02月02日(火)『2021シーズン ユニフォームスポンサー』のお知らせ

→Lumadaロゴの掲出もスポンサー収入が増額になっている要因のような気がします。2020年度の個別経営情報から28億規模になっているのを考えると、2021年2月は入りますので。

④クラブスポンサー数(2017シーズン→2023シーズン)
→2017シーズンと2023シーズンのクラブスポンサー数を比較するとこんな感じ。日立グループの再編もあり数字上は微増も東葛圏のクラブスポンサーの割合はやや増えています。

  •        2017    2024     
  • ユニフォーム:5社   → 8社
  • アカデミー :2社   → 3社
  • サプライヤー:4社   → 5社
  • クラブスポンサー:79社 → 80社 
  • オフィシャルグラウンドクルー:未設定 → 1社
    Save the Childrenは両年ともにCSRパートナー

⑤親会社の損失補填が非課税になった(2020シーズン)

プロ野球球団の親会社に認められている優遇がある。年度に生じた額を上限に、球団の欠損金を埋める補填や貸付金が損金と扱われ、非課税となるもので、1954年に国税庁の通達がなされている。今回、これと同じ扱いがJリーグの親会社にも認められた。

Jクラブへの投資追い風? 親会社が損失補填、非課税(日経新聞2020年6月23日)

柏は費目上計上されていないため直接関係がないはずですが、他クラブでは税制上の優遇措置も考えられます。2023年度の個別経営情報を見ると、神戸が14.0億、長崎が14.7億計上されています。特別利益には損失補填や不動産・有価証券の売却、寄付金などで得た利益が含まれるそうです。この金額=損失補填だとも言い切れませんが、過去の神戸社長の記事からするとそうなのかなと推察します。

入場料収入

入場料収入は4.13億円と2022年度4.82億円から結構大きな減収となりました。入場料収入は、2023年度(2023年4月~2024年3月)の入場料収入になります。

2023年度はリーグ戦 17試合189,214人(1試合平均11,130人)+カップ戦 3試合16,310人(1試合平均5,437人)で205,524人でしたから、入場収入4.13億円で割ると平均単価は2,009円ほどに。2022年度は同じ計算で2,877円でしたのでだいぶ下がったことになります。

ちょっと不思議な感じがしておりまして、リーグ戦観客動員は2022年9,265人から2023年度11,130人と増えているにも関わらず、入場料収入はマイナスになってしまっています。2024年J1所属クラブでは唯一のマイナスです。

・チケット単価で大きな変更はしていない。
・観客動員は増えている。

のに収入がマイナスになっているということは、招待券を増やした? 入場者に対する子供の割合が増えた? (シーチケが該当すると思うのですが)計上方法で変更があったか? でしょうか。ちょっと理由が分からないです。何かを変えない限り変わらない要素なので、意図して狙いがあって変えた結果であれば良いのですが、なんだろう。

Jリーグ配分金

Jリーグからの配分金です。こちらは2.95億円と2022年度3.78億円から8千万円ほどの減少です。J1所属クラブでは似た数字が並んでいたこの費目ですが、緩やかに傾斜傾向が伺えます。コロナ禍を受け、理念強化配分金は2020シーズン以降2023シーズンまで配分が停止されていたため、2023年度の最高は浦和の4.73億円、最少は湘南の2.76億円、J1平均は3.44億円と振れ幅が少なくなっています。ただし来年からはもっと傾斜がつくはずです。

というのもJリーグが傾斜配分に舵を切ったからですね。以下引用します。

シーズンの成績に基づいて翌年度(2024年度)から支給が始まる「理念強化配分金」(総額21億6000万円)がコロナ禍による一時停止を経て4年ぶりに復活。一方、カテゴリ別に配分される「均等配分金」は昨季比1億6000万円の減額となり、Jリーグが推し進める“結果配分”へのシフトが始まる形となった。

 理念強化配分金はDAZNの放映権取得とともに2017年に始まった制度。①日本サッカーの水準向上およびサッカーの普及促進、②若年層からの一貫した選手育成、③フットボール環境整備、④選手や指導者の地域交流および国際交流の推進ならびにスポーツ文化の振興—という目的に照らし、Jリーグ理事会の承認を経て配分金が与えられる。

Jリーグ配分金は“均等”から“結果”へ!! 理念強化金がJ1上位9クラブに拡大、降格救済金は今季限りで廃止(ゲキサカ 2023/1/31)

【理念強化配分金】
 ■競技順位による配分金(表1)
 ■人気順位による配分金(表2) ※人気順位=2023シーズン年間ファン指標順位(DAZN視聴者数など)

【ファン指標配分金】
 全Jクラブに対しての 総額約13.4億円を、2023シーズンのDAZN視聴者数やDAZNシーズンパス販売実績などで配分したもの


引用元:2024年度理念強化配分金の支給対象候補クラブ および2023年度ファン指標配分金支給対象クラブ決定((Jリーグ公式)

柏のファンが急激に増えたり、視聴数が伸びたりはちと考えにくいので、Jリーグの方針転換にどのレベルで追いついていくのか、追いつくことをしないのかはちょっと気になるところではあります。とはいえJ1に在籍してさえいれば金額は2億円ほどはあるのでしょうから、これまで通りの方針で行くような気がします。

その他収入

柏の収益を左右する最大の要因が「その他収入」です。「その他収入」としていますが、物販売上についてもこの項目で触れます。
2024年のメディア向けブリーフィングでの質疑応答を引用しておきます。

Q:損益計算書の見方について、「その他」収入にクラブごとに差があります。移籍金収入や指定管理などの収入も含まれているのでしょうか。他にこのような収入もあるということについて、個別のクラブについてはお話しいただけないかと思いますが、一般的なサッカークラブの収入として、どのような項目があるのか教えてください。

A:ご質問の通り、移籍金、施設の指定管理を行っているクラブにはそうした収入も含まれます。またリーグ戦やACLの賞金、出場給なども「その他収入」に入ってきます。

引用元:2024年度 第5回Jリーグ理事会後会見 および2023年度クラブ経営情報開示メディアブリーフィング発言録((Jリーグ公式)

賞金

2022年度は天皇杯準優勝がありましたので、5千万円が含まれています。

物販

柏は他クラブと異なり加茂さんにほぼすべて委託しているため物販費目の計上は100万円が何年も並んでいまして、2022年度は0円でしたが、2023年度は1,100万円が計上されています。この金額が何なのかはちょっと分かりません。過去の意見交換会の説明を引用します。

なお、この金額ですがグッズについては、企画、仕入、販売の一連を加茂商事さんへ委託しております。開示されている金額が全ての売上高という訳ではございませんので、他クラブと比較して突出して少ないという訳ではありません。商品化事業をアウトソーシングをすることで、在庫高や販売にかかる諸経費を大きく削減しております。

2020年レイソル意見交換会

移籍金

レイソルの2023年度は2023年4月から2024年3月までですので、この間に移籍していった選手の移籍金が計上されます。一般的に受け取り移籍金は移籍したシーズンに一括で計上されたはずです。フリー移籍であれば当然0円です。

2023オフの移籍でお金が発生してそうなのは、椎橋選手、山田康太選手、仙頭選手、森選手くらいでしょうか。ネルシーニョ政権に比べればだいぶおとなしいオフシーズンでしたので。

その他収入の総額は5.78億円でした。2022年度7.21億円からはやや減ったもののかなり大きな数字となっています。直近5年分で見てみると、9.33億円→2.38億円→11.77億円→2.60億円→7.21億円→5.67億円と推移しています。明確に分かるのは11.7億の年はオルンガ様、去年の7.21億にはキムスンギュ様、2018年の9.33億円には中谷さんの移籍金が入っているはずです。大きな動きがないと2019年の2.38億円とか2021年の2.60億円ほどなので、ある程度まとまった額の移籍金が取れた選手がいたのかもしれません。

 

費用(売上原価+一般管理費)

支出の方も収入と同じように【Jリーグ クラブ経営ガイド】の費目を確認するところから始めます。1つ注意しなければいけないのは、経営ガイドは2022年版が最新であり、その後2023年度から個別経営情報の費目が変更になっています。チーム人件費と書かれていると箇所は、現在はトップチーム人件費となるため、監督・スタッフ報酬はトップチーム分のものが該当します。同様にアカデミーの監督・スタッフの費用はアカデミー運営経費の方に載せましょうということになっているはずです。柏の場合はそのままスライドしているっぽいのですが、クラブによっては育成組織を別法人・団体で運営しているところもあります。そうしたクラブの場合は極端にアカデミー運営経費が少なくなるなどがありえます。


引用元:Jリーグ クラブ経営ガイド 2022

総費用

ココから支出です。まず支出ですが、先ほど書いたように2022年度分から費目が変更になっています。

大きな変更点は2つ。
営業費用という費目が、売上原価+販売費および一般管理費に分けられた
人件費は従来すべてのチームの人件費だったものが、【TOPチーム】のみに変更になった

柏を例に挙げると、2021年度発表のチーム人件費は31.05億円でしたが、2022年度発表資料を見ると、TOPチーム人件費は30.33億円とやや少ない金額となっています。この差分がレイソルの場合はアカデミーの人件費にあたるものと思われます。※他のクラブの場合、育成や女子を別法人としてしているクラブも少なくないので注意が必要です。

経年変化はなるべく同じ指標で見る必要があるので、これまで発表されていた営業費用(営業原価+販売費および一般管理費)を総支出として見ていくことにします。費目によっては厳密に同じ定義ではない点があることはご容赦ください。

年度総支出TOP人件費試合関連経費TOP運営費アカデミー運営費女子運営費物販関連費その他売上原価販売費一般管理費
23年度38.9726.541.151,761.45-0.0108.06
22年度45.1531.881.322.501.32-0.0108.12
21年度42.7531.051.331.990.22-0.01-8.15-
20年度46.1528.791.238.530.14-0.01-7.45-
19年度42.0629.401.263.260.31-0.41-7.42-
18年度41.2828.061.353.140.37-0.53-7.83-
17年度34.4023.081.581.830.33-0.61-6.97-
16年度28.3017.531.321.800.39-0.48-6.78-
15年度30.8318.881.672.320.40-7.56
14年度31.9520.591.382.090.39-7.50
13年度33.8021.181.982.660.40-7.58
12年度35.2720.471.742.250.38-10.43
11年度33.9119.191.532.680.36-10.15
10年度26.9814.857.244.89
09年度29.3015.808.325.18
08年度30.4816.948.435.11
07年度31.0516.939.484.64
06年度34.6221.888.604.14
05年度38.5833.984.6
※スマホは費目を結合しているセルがあるため横スクロールできません。PCなどで見てください。
※単位は億円。2022年より大きく費目が変更。一般管理費が売上原価から外れたため総支出として記載。また、人件費もTOPチームとそれ以外とをわけるようになったためこれまで発表の数字と定義が異なる点に留意。

従来との比較のため、レイソルの総支出金額として売上原価30.91億円に販売費および一般管理費8.06億円を合計した38.97億円という数字を使います。2022年度は45.15億円(売上原価37.03億円+販売費および一般管理費8.12億円)、同様に2021年度は42.75億円、2020年度は46.15億円でしたのでだいぶ少なくなっていることが分かります。

では例年のように内訳をみていきます。

TOPチーム人件費(チーム人件費)

レイソルの営業費用で大きな割合を占めるチーム人件費です。前述のとおり2023年発表分から定義が変更になっています。これまではアカデミーの人件費も含まれていましたが、TOPチーム人件費のみに変更となっています。2020年分までは公式発表の資料から遡れますので比較しながら見ていきます。

      TOPチーム人件費  チーム人件費(2021年まで)
2023年度 26.54億円(68.1%)
2022年度 31.88億円(70.6%)
2021年度 30.33億円(70.9%) 31.05億円(72.6%)
2020年度 27.89億円(60.43%)28.79億円(62.38%)
2019年度            29.40億円(69.9%)
2018年度            28.06億円(68.0%)
2017年度            23.08億円(67.1%)
2016年度            17.53億円(61.9%)

TOPチーム人件費は26.54億円。歴代最多だった2022年度より5億円のマイナス。J1では7番目の数字になります。

レイソルは3月決算ですので、この26.54億円には、
・2023シーズンの選手・スタッフの給料(基本給+勝利給など)
・2023年4月から2024年3月までに加入した選手の移籍金(一部)
が加わっています。

獲得の主な動きとしては、2023シーズン途中に犬飼さん。2023オフシーズンには犬飼さんが期限付き→完全移籍の他、木下選手、野田選手、島村選手、白井選手を獲得しています。

営業費用におけるチーム人件費の割合は、70%を下回ったもののまだ高い部類です。以前は支出をできるだけ人件費に割くという経営戦略を採用していましたが、金がかかるネルシーニョ政権も終わり、少しコンパクトな形になっていくものと思われます。

移籍金の計上については、なかなか纏まっている記事が少ないのですが、元東京Vの強化部の方が書かれた下記の記事が参考になります。この辺も会計ルールが変わったとかいう別の記事を読んだ気もしますが。

それ以外の支出項目

その他の支出項目は、例年の数字に近い数字が並んでいます。試合関連経費(ホームゲーム開催費)は1.15億円となってます。例年同じくらいの金額です。J1所属クラブでは少ない金額です。

トップチーム運営費は、1.76億円でした。2022年度が2.50億円、2021年度は1.99億円でしたので元の規模に戻ったとみてよいでしょう。他の理由があるのかはちょっと不明です。ちなみに、トップチーム運営費には、チームの移動経費、施設や寮関連の費用、代理人(仲介人)手数料などが含まれます。コロナ禍はバスを2台に分けたり相部屋を禁止して1人部屋にしてたりしていたはずなのでその分が元に戻った可能性はありそうです。

経年変化

経年変化のグラフを載せておきます。費目が変わっているので参考程度ですが、グラフで見ると費目の割合についてはイメージが掴みやすいと思います。

 

単位は億円
※11年度以前は試合経費、チーム運営費経費、アカデミー運営費の内訳が発表されていません。
※販管費は17年に費目が分かれたので、販売費および一般管理費と物販関連費の合計値です。
※2022年度から売上原価と販売費および一般管理費が分かれたため便宜的に総支出額の費目を作成した。

収支について

債務超過解消

・2019年度
3度目のJ2降格を救ってもらうためにネルシーニョ監督を再招聘しました。無事1年でJ1に復帰となりチームを救ってもらいましたが、10億円の赤字となり貸借対照表を痛めてしまいました。

・2021年度
チーム人件費の高騰+コロナ禍もあって単年で4億円の赤字となり。3.6億円の債務超過に陥ってしまいました。レイソルで言えば2度目の降格をした2009年度以来となる債務超過状態です。

・2022年度
1億円の利益を出すことができました。債務超過はクリアできなかったものの回復基調に乗りました。

・2023年度
ネルシーニョとのお別れが先なのか、コンパクトな経営が先なのかは判断に迷うのですが(退任したネルシーニョが今年は「お金が…」的なこと言ってた記憶があるのである程度緊縮傾向だったと思っています)…4.9億円の利益を出すことができました。懸案だった債務超過も解消されました。

債務超過を気にする必要があったのは、以下のルールがあるからです。

2023年度以降の財務基準
◼ 2022年12月に公表した通り、2023年度は再度特例措置とし※、それを踏まえて猶予期間を2024年度までに延長。2025年度末から元の基準に戻すこととする(特例措置なし) 

引用元:2023年度クラブ経営情報開示資料(先行発表) 15ページ

Jリーグクラブライセンス制度の財務基準では

・3期連続の当期純損失(赤字)を計上していないこと
・債務超過でないこと
・移籍金や給与の未払いが生じていないこと

が求められています。(厳密にはもう少し細かい基準があります)

コロナ禍を受けて、各クラブ厳しいため2020年度2021年度は特例措置期間となっていました。上記に抵触してもすぐにライセンス失効とはなりませんでした。2022年度からは猶予期間に変更となり、猶予期間中は、

・債務超過額(柏の場合3.6億円)より増えてはならぬ
・新たに債務超過に陥ってはならぬ
・3期連続赤字のカウントを始める(1年目としてカウントする)

という決まりとなっていました。

ですが、これが再度改められ、2023年度も特例措置期間に変更になり完全に債務超過を解消しているのは2025年度で良くなっていたのですが、だいぶ早く解消されました。

No reysol,No life

スタッフや選手(外国籍選手)にお金をかけるネルシーニョ体制は終焉を迎え、井原体制を継続させているレイソル。達磨さんが整え下平さんが花開かせた「TOPとアカデミーの融合」とネルシーニョイズムであった「球際で負けない、縦に早く」の良いところを取り入れようとしているように見えるのですが、どうも中途半端な感じがしているのは私だけでしょうか。タイトルが取れていないとか順位的なものではなく、やはり「良い所取り」というのは尖って見えないからかなと思っています。絶対にボールを握るぞとか、後ろ指刺されようが勝ちに拘るとか、ミシャ式とか振り切ったスタイルの方が尖って見えますし。

そういった意味では、柏が今後どういったスタイルのサッカーをしていくのか。TOPだけでなくアカデミー含めてスタイルを再定義する必要があるのかが直近問われているような気がします。日立様におんぶにだっこでいられる=余裕がある間にこの辺りを突き詰めても良いのかなと。ただ、スタイルを作るということは「尖り」を作ることになるわけで、成績が奮わなくても我慢し続けてもらえるほどの信頼関係がないと成り立ちにくいのも事実。昔達磨さんが「やや意固地になっているように見えた」的な理由で解任されたのは、スタイルに固執しすぎたとか、スタイル的に譲れないポイントでの衝突だったような気がします。

明確にこうしたスタイルを描けているクラブがJリーグあるかと言われれば、少ないのかもしれないのですが。将来のレイソルを描くのか。描く役割は誰なのか。布部さんなのか背広組の経営層なのか。は気になっています。

もう1つが、レイソルアカデミーが歴史を積み重ねていく中で、引退していったアカデミー卒の方々が増えてきた点をどう捉えるかです。

アカデミーからプロサッカー選手を輩出するぞという線は繋がりました。Jクラブの育成を見渡しても成功した部類でしょう。TOP of TOPかは分かりませんが、TOP5には入るのは間違いないと。GKからDF、攻撃的な選手まで代表や海外で活躍できる選手を輩出してきました。まぎれもない事実です。

タニさんが引退し、達磨チルドレンもピークを越え始めてきたので、今後は引退して次の道に進むアカデミー卒も増えてきました。そんな中、個人的に取り組んでもらいたいのは、アカデミー→サッカー選手→指導者→トップ指導者。この後半の線を繋ぐ部分に取り組んで欲しいなと。柏の育成組織を巣立って、柏で引退しようが他クラブで引退しようが、指導者への道を歩む際に柏をもう一度通過してもらう。できれば柏のTOPチームを率いてもらう。焼き鳥屋さんが秘伝のたれを継ぎ足し継ぎ足しされているように、柏のスタイルを紡いでそんな方々が増えていく。そんな世界が見れたら素敵だなぁと。夢かもしれないですが、比較的夢を描く時期な気がするんですよね。今って。

となると、現状のチーム数だと限界もあるかと感じていたりします。TOP以外に、U-18A、U-18B、日体柏だけでは足りなくなりつつあるなと。早くして指導者の道を歩んだ人、大学時代に選手の道ではなく指導者の道を歩んだ人、柏で成功したスーパーな選手。具体的に言えば、菅沼実のレイソルも、キタジが率いるレイソルも、林陵平さんも、大谷さん、栗澤さんのレイソルも、筑波大の戸田くんが率いるレイソルだって見てみたいじゃないですか。

そう考えると率いるチーム数が少ないなと。

引用元:レイソルアカデミー概要

アカデミーのこのピラミッドを、縦なのか横なのか分からないけど少し大きくしていく。地域リーグ所属クラブとの連携みたいな形ができたら、少しすそ野が広がるかなと。指導者の選択肢が増えやしないかと。そんな動きが始まったら最高だなとか勝手に思っています。

タイトルとURLをコピーしました